【和歌山】イルカ追い込み漁解禁　太地町

ところで、イルカの追い込み漁の歴史は半世紀弱しかなく、４００年以上の伝統がある捕鯨全体とは事情が違う。

スピードが速く、追い込みにくいイルカは元々は銃やもりで捕っていた。生け捕りが期待できる追い込み漁による捕獲は、事実上、水族館のために始まった。
あまり知られていないが、イルカは生体販売か食用かによって価格差が極めて大きい。飼育しやすくショーでも主役を張れるバンドウイルカの若い雌の生きた個体（体長２メートル３０センチ〜２メートル５０センチ）なら９月は１頭１００万円、１０月以降でも９０万円の値がつく。

一方、食用は１頭２万〜３万円にしかならない。需要が乏しいからだ。太地町漁協の脊古輝人（せこてると）組合長は「ビジネスと考えれば全て生け捕りで出せる方がいいが、この町には食文化も加工業者も残っており、わずかであっても食用は必要だ」と理解を求める。

ただ、水族館の要請で始まった経緯から見て、イルカの追い込み漁には文化的背景が乏しく、伝統漁業とはいいがたい。食用向けの価格からいえば、産業として破綻もしている。